騒音のない世界 BLOG

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LANDRで楽曲をApple Musicに配信して困ったこと

ひとりインストバンド「騒音のない世界」のbecoです。YouTubeやSoundCloudに毎月新曲をリリースしています。 noiselessworld.net

最近リスナーの方からちらほら要望があったので、毎月リリースしている曲をApple MusicやSpotifyなどにも配信しようと考えました。そこで、ディストリビューションサービス(楽曲の配信サイトへ一斉配信してくれるサービス)を色々と比較した所、LANDRというサービスが良さそうだったので使ってみました。今回はLANDRを選んだ理由と、実際に使ってみて困った点について書きます。

以下は2019年7月時点での情報となりますのでご注意ください。

LANDRを選んだ理由

LANDRは楽曲のディストリビューションサービスです。実店舗でCDを販売するのではなく、iTunes Storeなどのネット配信に特化しています。競合サービスとしては TuneCore、CD Baby 、Big Up! などがあります。最近はSoundCloudからもApple Musicなどに配信できますね。

他サービスと比べて良かったのは、月額定額制でリリースし放題のプランがあった点です(現在400円/月)。他サービスはリリースごとに年額で課金されるものが多かったので、毎月1曲ずつリリースするやり方だと高額になってしまい、向いていませんでした。

その代わり、現在は他サービスと比べると日本国内のサービスへの配信先があまり充実していません。LINE MUSICやAWAへの配信には対応していますが、例えばTuneCoreだとそれに加えてmoraやレコチョク、うたパスなど遥かに多くの国内サービスに対応しています。

TuneCore Japan

ただ、YouTubeやTwitterで頂いたコメントだとApple Music、Spotify、LINE MUSICあたりの利用者が多いイメージがあり、そのあたりに対応できてれば良いと判断し、LANDRに決めました。

ちなみに、SoundCloudも有料プランに入れば定額でリリースし放題のようなのですが、配信先がまだ少なく、日本のサービスには対応していませんでした。LINE MUSICは外せないと思っていたのでSoundCloudは見送りました。

配信してみて困った点

配信してみて困った点を紹介します。これから配信する人の助けになればと思います。ただし、僕は複数サービスを使い比べてはいないので、必ずしもLANDR特有の点というわけではないと思います。他のサービスでも同様かもしれないのでよく確認してください。

言語と時差の壁があった

LANDRはサービスページが日本語化されているのですが、日本支社は現状無いみたいです。サポートも基本的に英語です。僕は仕事で英語を読み書きすることも多いですし、特に苦手という程でもないのですがやはり日本語よりもコストは高いです。

日本語に自動翻訳されることもあるのですが、若干カタコト翻訳なのと、たまに別な言語に翻訳されます(英語、日本語、中国語で送られてきてカオス)。ただ、意味がわからないときは申請すると手翻訳の自然な文章を送ってくれる機能もあります。これは感動しました。

僕は英語で問い合わせしていますが、普通に日本語ローカライズされているサービスなので日本語のやりとりにも対応してくれそうではあります。ただ対応を後回しにされそうな気がして… 検証していません。

あと言語とは別なのですが、本社がおそらくカナダのモントリオールにあるようで、日本との時差が結構すごいです(日本マイナス13時間。LAとベルリンにもオフィスがあるみたいなのでどこの人がサポートしているかは謎だけど何にせよ時差がある。)。また、土日はサポートが休みなので土曜リリースとかして問題があると月曜まで返事が帰ってこないので注意が必要です。

ジャケット画像の必須サイズが大きい

ジャケット画像の最低必須サイズは3000x3000です。僕は写真素材をそのままジャケット画像にすることが多いのですが、3000x3000に満たないものも多く、かといって引き伸ばすと汚くなるのでちょっと困りました。

最近は超解像といって画像を拡大したときにガビらないようにうまく補完してくれるような技術があり、Webサービスで利用できたりするのでそれを使ってできるだけ綺麗に引き伸ばしたりしています。

こういうのとか。

Bigjpg - AI Super-Resolution Image lossless enlarging / upscaling tool using waifu2x Deep Convolutional Neural Networks

あと、Photoshopの最近のバージョンだと機能として備わっていたりします。(「ディテールを保持 2.0」という、知ってないと絶対わからない謎の名前ですが…)

Photoshop CC 2018がついに禁断の機能を搭載で最強に - じゃじゃむねっと

英語と日本語が混在できない

これは結構致命的だったのですが、Appleの最近のスタイルガイドの変更でアーティスト名や曲名、アルバム名などのメタデータは日本語(ひらがな、カタカナ、漢字)と英語(ローマ字)を混在できなくなったみたいです。

僕の場合は「騒音のない世界」というアーティスト名を英語表記にするわけにはいかないので、曲名やアルバム名を日本語表記で統一する必要がありました。曲は日本語名が多いので大体は問題なかったのですが、古い曲の一部をカタカナ表記にする必要があったのと、ちょうどリリースを予定していたアルバムのタイトルをリリース直前で日本語に変更することになってしまいました。

定額制の配信サービスのみには出せなかった

楽曲によっては販売のみ、定額配信のみ、と分けたかったのですが、片方だけという設定はありませんでした。例えばiTunes Storeに出すとApple Musicにかならず出るし、Amazon Musicに出すと販売も定額配信もどちらも出るようです。

この辺はストアの仕様のような感じがします。買い切りの販売よりも定額配信に寄せていきたいのかな?と。

YouTube Musicの仕様が合わなかった

配信先は全て月額課金の有料の定額制聴き放題サービスと思っていたのですが、YouTube Musicは広告を見れば無料でフル視聴できるモデルのようでした。さらに、YouTube Musicに配信した曲はYouTubeにも自動的に転載されてしまうようでした。「アートトラック」というようなのですが、有料限定で出そうとした楽曲が無料でYouTubeにも出てフルで聴ける状態になってしまいました。

アートトラックとは - YouTube ヘルプ

また、YouTubeに出ているアートトラックは一見すると無断転載にも見え、複数名のリスナーの方々から問い合わせもありました。

一度リリースすると個別に公開先を変更できなかった

上記の理由から、YouTube Musicへの配信を止めたかったので問い合わせたのですが、「個別に公開先を変更することはできない」と言われてしまいました。「配信先を変更したければいったん配信を全て停止し、新規のリリースを作って配信してください」とのことでした。

このへんはシステム的に不可能なわけはないので、ストアとの契約の問題なのか、サポートでどこまでやるかの線引きとして「やらない」判断になっているのか、ちょっと謎です。

ストアによって公開/停止の反映までの時間が違った

LANDRでリリースを申請してから審査が入って各ストアに配信されるのですが、実際にストアに公開されるまでの間に遅延があります(一瞬でリリースして一瞬で止められると良いのですが…)。どのくらい遅延するかもストアによって結構差があって、例えばLANDRのヘルプだとApple Musicへの公開は平均で24時間と書いてあるのですが、最近は1週間ぐらいかかっており、一番遅いです。逆にYouTube Musicは公開も停止もかなり速かったです。

このヘルプページの数字、ぜんぜん当てになりません…

リリースを提出してからどれくらいでお店で販売されますか? – 私たちがお助けします!

そのような事情があり、公開先の変更のための再リリースにも1.5週間程度かかってしまいました。(余裕を持って1.5週後に公開予約した後、公開停止は余裕を見て1週間前に行いました)

ストアのデフォルト価格から変更できなかった

現状は申請時も公開後も価格の設定ができません。ストアごとにそれぞれの基準でデフォルトの価格があり、そちらで決まるようです。1曲の値段はどのストアも一律200円でしたが、iTunes Storeのみアルバムが半額でリリースされてしまいました(1200円 → 600円)。

これについては問い合わせたら「現在は変更できないが、将来対応予定」とのことでした。現状は価格はすべてストア任せになってしまうようです。競合サービスだとできるっぽいのでこの辺はLANDRに頑張って欲しいところです。

おわりに

まだまだ不便な点もありますが、月額400円でリリースし放題プランは最高なので今後もLANDR使っていきます。こういったサービスのおかげで個人アーティストがマネタイズしやすい世の中になってきてるなあと感じます。仕様やポリシーの異なるストアを一つにまとめるのは大変なところもあると思いますが、頑張って欲しいです。

最後に宣伝になりますが、よければ楽曲聴いてください〜。

Apple MusicやSpotify、LINE MUSICは「騒音のない世界」で検索すると出てきます。

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